この展覧会についてABOUT THIS EXHIBITION
幕末から明治へ―激動の奈良を生きた無二の異才、森川杜園。その妙技と芸術の全貌に迫る。
森川杜園(もりかわとえん 1820-1894)は、幕末から明治という時代の変革期に、奈良人形(一刀彫)の制作を軸に活躍した奈良の彫工です。古都・奈良の風雅な趣の伝統美を造形上の理想に掲げ、鋭い刀法と高度な彩色技術を用いてこれを制作しました。その卓越した技術と豊かな造形性は、単なる職工の域にとどまらない優れた芸術性を示すものとして、竹内久一や平櫛田中といった後世の彫刻家から高く評価されています。
森川杜園(幼名・友吉)は、文政3年(1820)現在の奈良県奈良市で生まれました。 13歳の頃から興福寺終南院の代官で四条派の画風で知られる内藤其淵に絵を学び、その画技を認められて当時の奈良奉行から扶疏(ともしげ)の名と杜園の号を与えられました。また、この頃より学んだ狂言では、大蔵(山田)八右衛門の名跡を継ぎ、大蔵流狂言師山田弥兵衛を襲名するほどの名手となりました。
一方同時期、漆芸家で画家の柴田是真のすすめにより奈良人形(一刀彫)の制作を開始します。奈良人形は、春日大社の摂社・春日若宮の祭礼で用いられる花笠や島台の装飾に淵源を持つと伝わる奈良の伝統工芸で、面と稜線を生かした簡素な形態の木彫りの人形です。杜園は、元禄期以来の伝統を継ぐ岡野松壽の作品に学びながらも、写生を踏まえた豊かな表現と極彩色を特徴とする華麗な作風で、これを芸術の域にまで高めました。
また、幕末には「春日若宮大宿所神前絵師」や「春日有職奈良人形師」と称して、独特の鹿彫や、能や狂言を題材とする奈良人形を制作する一方、維新後の神仏判然令に端を発した廃仏毀釈の混乱を経て、政府の古器旧物(文化財)保護活動や、奈良県の振興を目的とする奈良博覧会社の事業に携わり、正倉院宝物や県下の名宝の模写・模造の制作に取り組みました。杜園の妙技が発揮されたこれら後年の作品は、内国勧業博覧会(第1、2、3回展)やシカゴ万国博覧会で受賞を重ね、日本の彫刻史に確かな足跡を残すこととなりました。
このように杜園は、奈良人形(一刀彫)中興の祖として位置づけられると同時に、日本近代彫刻の先駆け的存在として近年見直されつつあります。杜園の生誕200周年を記念する本展は、杜園芸術の全貌を紹介しようとするもので、その意義と特質を改めて検証する機会とします。
なお本展では、「令和 3 年度国立博物館貸与促進事業」を活用し、国立博物館が所蔵する森川杜園の代表作などを借用し、公開します。
開催概要EVENT DETAILS
| 会期 |
2021年9月23日(木・祝)〜2021年11月14日(日)
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|---|---|
| 会場 |
奈良県立美術館
|
| 住所 | 奈良県奈良市登大路町10-6 |
| 時間 |
9:00〜17:00
(最終入場時間 16:30)
|
| 休館日 |
月曜日 ※ただし11月1日と11月8日は開館 |
| 観覧料 | 一般 800円 大・高生 600円 中・小生 400円
|
| TEL | 0742-23-3968 |
| URL | https://www.pref.nara.jp/11842.htm |
奈良県立美術館の情報はこちらMUSEUM INFORMATION
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出展作品・関連画像IMAGES
森川杜園《能人形 牛若・熊坂》明治時代(19世紀) 東京国立博物館蔵 Image:TNM Image Aechives
森川杜園《福の神》明治22年(1889) 個人蔵
森川杜園《融》明治20年(1887) 公益財団法人 名勝依水園・寧楽美術館蔵
森川杜園《御生玉伏白鹿座像》慶応2年(1866) 春日大社蔵
森川杜園《観音菩薩立像(九面観音像)(模造)》明治25年(1892) 東京国立博物館蔵 Image:TNM Image Aechives