この展覧会についてABOUT THIS EXHIBITION
禅の教えを世界に広めた導師であり、精神と物質の差異を無化してしまう「霊性」という理念を提起して近代日本思想を刷新した鈴木大拙(1870-1966)。晩年、アメリカで講義を行う大拙のもとに、この後、現代音楽に革命をもたすジョン・ケージ、現代文学に革命をもたらす J・D・サリンジャーなどが集った。大拙の教えは、正真正銘、現代芸術の一つの源泉でもあった。それは決して偶然ではなかった。
大拙の生涯の伴侶となったビアトリスは、東洋思想に淵源する近代の総合宗教、神智学を信奉していた。神智学もまた、精神と物質の差異を無化してしまう「心」から、さまざまな感覚にしてイメージ、色彩にして形態が発生してくる様を具体的に説き、絵画の主題として「抽象」を選んだ表現者たちに甚大なインスピレーションを与えていた。「抽象」と東洋思想が何重にも交錯するなか、ヨーゼフ・ボイスの作品群が、ナムジュン・パイクの作品群が、続々と生み落とされていく。
それだけではない。高等中学校以来の盟友である西田幾多郎の哲学、互いに無名であった頃に書簡を交わした南方熊楠の生物学、自らの後継者と考えていた柳宗悦の民藝など、大拙からの影響は、グローバルとローカルという区別を超えて、あらゆる表現ジャンルの区別を超えて、きわめて巨大である。本展は、鈴木大拙からはじまる表現の系譜、その未知なる可能性を、さらに未来へと切り拓いていくための試みである。
テキスト:安藤礼二
禅は無道徳(アンモラル)であっても、無芸術(ウイザウト・アート)ではありえない。
鈴木大拙 『禅と日本文化』(訳:北川桃雄)より
今は永遠の今である、絶対現在である。
過去・現在・未来と直線に流れて続く今でない
… 無限大の円環にのみ見出される中心である。
鈴木大拙『日本的霊性』より
耳で見て、目で聞く。そうすれば正しく見ることができる。正しく、真実に、正確に聞くことができるのです。禅が我々に期待するのは、こうした体験です。
鈴木大拙『大拙 禅を語る』(監修・訳:重松宗育)より
直感は、何らかの意味で常に創造的です。
鈴木大拙 『鈴木大拙 コロンビア大学セミナー講義(上)』(訳:重松宗育、常盤義伸)より
◆ 鈴木大拙(すずき だいせつ)
仏教学者。本名、貞太郎。石川県金沢市生まれ。東京帝国大学在学中、鎌倉円覚寺に参禅し、居士号「大拙」を受ける。1897年渡米、出版社に勤務。1909年帰国後、学習院、東京帝国大学講師、翌年、学習院教授となる。11年にビアトリス・アールスキン・レーンと結婚。21年大谷大学教授に就任。36年ロンドンでの世界信仰会議に出席。49年-58年、アメリカの大学やヨーロッパに赴き、大乗仏教思想とくに禅思想を講じる。英名D.T.Suzukiとして知られる。
開催概要EVENT DETAILS
会期 |
2022年7月12日(火)〜2022年10月30日(日)
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会場 | ワタリウム美術館 Google Map |
住所 | 東京都渋谷区神宮前3-7-6 |
時間 |
11:00〜19:00
(最終入場時間 19:00)
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休館日 |
月曜日 ※7月18日(月・祝)、9月19日(月・祝)、10月10日(月・祝)は開館 |
観覧料 | 大人 1,500円 大人ペア 2,600円 学生(25歳以下)・高校生・70歳以上 1,300円 小・中学生 500円
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TEL | 03-3402-3001 |
URL | http://www.watarium.co.jp/ |
ワタリウム美術館の情報はこちらMUSEUM INFORMATION
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