国立西洋美術館は、フランス政府から寄贈返還された松方コレクション（川崎造船所初代社長、衆議院議員も務めた実業家の松方幸次郎が、1916（大正5）年から約10年あいだにヨーロッパで収集した印象派の絵画やロダンの彫刻などを中心とするフランス美術コレクション）を基礎に、1959（昭和34）年4月に発足した。

以来、広く西洋美術全般を対象とする唯一の国立美術館として、展覧事業を中心に運営が行われている。

松方がヨーロッパで収集した美術品のうち、パリに残されていた作品群は、第二次大戦の末期に敵国人財産としてフランス政府の管理下に置かれ、1951年、サンフランシスコ平和条約によってフランスの国有財産となった。しかし、その際に、首相吉田茂がフランスの外相に申し入れ、松方コレクションの返還交渉が開始されることとなった。

その後の交渉の中で、コレクションの中で重要な、ゴーガンやゴッホなどいくつかの作品についてはフランス側が譲らず、結局、絵画196点、素描80点、版画26点、彫刻63点、参考作品等5点の合計370点の作品が、フランス美術館を創設するという条件付きで寄贈返還された。美術品を受入れるための美術館は、近代建築の巨匠のひとり、ル・コルビュジエにより基本設計が行われ、1959（昭和34）年に国立西洋美術館として開館した。

1979年には、前川國男の設計によって新館が設立された。常設展としては、年間を通して、松方コレクション作品および創立以来毎年購入している中世から20世紀にかけての作品および寄贈・寄託作品の展示を開催している。

また、1997年（平成9年）に竣工した企画展示館において欧米の美術館等からの借用作品による新聞社等との共催展等を年3回程度開催し、西洋美術の紹介に力を注いでいる。

2016年7月、国立西洋美術館の本館を含む「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」が世界文化遺産に登録された。3大陸をまたいでの初めての世界遺産登録となる。国立西洋美術館の建造物は、日本唯一のル・コルビュジエの建築作品である。