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2023年上半期に開催スタートの注目の
展覧会を一挙ご紹介!(第1弾は関東版)

「エゴン・シーレ展」「マティス展」「ルーヴル美術館展 愛を描く」「佐伯祐三 自画像としての風景」
「東京国立近代美術館70周年記念展」「へザウィック・スタジオ展」「マリー・ローランサンとモード」 ほか

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新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

今年も新しい年のはじめに、アートアジェンダがお薦めする、2023年の上半期(1~6月)に始まる12の注目の展覧会をご紹介します。 第1弾は、東京他で開催される関東エリアの展覧会の紹介です。(第2弾 関西&全国版のおすすめ展覧会はこちらから

2023年上半期の関東版では、ウィーン世紀末美術を展観する「エゴン・シーレ展」や、絵画のみならず、彫刻、素描、版画などその仕事を多角的に紹介する「マティス展」、東京から大阪へも巡回予定の短い生涯を燃焼し尽くした画家「佐伯祐三展」、開館70周年の東京国立近代美術館で開催の重要文化財に指定された作品のみを紹介する「東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密」など、必見の展覧会の数々を紹介しています。

ぜひ、アートアジェンダ展覧会情報 をご参考にしていただいて、今年もたくさんの美術館・展覧会をお楽しみください。

人間の内面や性を生々しく描き出した夭折の天才、エゴン・シーレをめぐるウィーン世紀末美術を展観する大規模展

《ほおずきの実のある自画像》1912年 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna
《ほおずきの実のある自画像》1912年 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

世紀末を経て芸術の熟期を迎えたウィーンに生き、28年という短い生涯を駆け抜けたエゴン・シーレ(1890-1918)。最年少でウィーンの美術学校に入学するも、保守的な教育に満足せず退学し、若い仲間たちと新たな芸術集団を立ち上げます。しかし、その当時の常識にとらわれない創作活動により逮捕されるなど、生涯は波乱に満ちたものでした。

孤独と苦悩を抱えた画家は、ナイーヴな感受性をもって自己を深く洞察し、ときに暴力的なまでの表現で人間の内面や性を生々しく描き出しました。表現性豊かな線描と不安定なフォルム、鮮烈な色彩は、自分は何者かを問い続けた画家の葛藤にも重なります。

本展は、エゴン・シーレ作品の世界有数のコレクションで知られるウィーンのレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、シーレの油彩画、ドローイング40点以上を通して、画家の生涯と作品を振り返ります。加えて、クリムト、ココシュカ、ゲルストルをはじめとする同時代作家たちの作品もあわせた約120点の作品を紹介します。夭折の天才エゴン・シーレをめぐるウィーン世紀末美術を展観する大規模展です。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(1)
「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」
開催美術館:東京都美術館
開催期間:2023年1月26日(木)~4月9日(日)

約20年ぶりの日本での大規模回顧展。世界最大規模のマティス・コレクションを所蔵するポンピドゥー・センターの協力を得て開催

アンリ・マティス 《読書する女性》 1895年 油彩/板 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle
アンリ・マティス 《読書する女性》 1895年 油彩/板 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle

20世紀美術を代表するフランスの巨匠アンリ・マティス(1869-1954年)の大規模回顧展が、世界最大規模のマティス・コレクションを所蔵するポンピドゥー・センターの協力を得て開催します。

20世紀初頭の絵画運動であるフォーヴィスム(野獣派)の中心的な存在として活動したのち、84歳で亡くなるまでの生涯を、マティスは、感覚に直接訴えかけるような鮮やかな色彩とかたちの探求に捧げました。彼が残した革新的な仕事は、今なお色あせることなく私たちを魅了し、後世の芸術家たちにも大きな影響を与え続けています。

絵画に加えて、彫刻、素描、版画、切り紙絵、晩年の最大の傑作と言われるヴァンスのロザリオ礼拝堂に関する資料も含めて、マティスの仕事を多角的に紹介する本展は、その造形的な冒険を辿ることのできる貴重な機会となります。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(2)
「マティス展」
開催美術館:東京都美術館
開催期間:2023年4月27日(木)~8月20日(日)

西洋社会における様々な愛の概念が絵画芸術にどのように描出されてきたのかを、ルーヴル美術館のコレクションから精選の70点余りで浮き彫りに

《アモルとプシュケ》、または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》フランソワ・ジェラール 1798年 油彩/カンヴァス 186x132cm パリ、ルーヴル美術館
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Tony Querrec / distributed by AMF-DNPartcom
《アモルとプシュケ》、または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》フランソワ・ジェラール 1798年 油彩/カンヴァス 186x132cm パリ、ルーヴル美術館
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Tony Querrec / distributed by AMF-DNPartcom

人間の根源的な感情である「愛」は、古代以来、西洋美術の根幹をなすテーマの一つでした。ギリシア・ローマ神話を題材とする神話画、現実の人間の日常生活を描く風俗画には、特別な誰かに恋焦がれる神々・人々の情熱や欲望、官能的な悦び、あるいは苦悩や悲しみが、様々なかたちで描かれています。

一方、宗教画においては、神が人間に注ぐ無償の愛、そして人間が神に寄せる愛が、聖家族、キリストの磔刑、聖人の殉教といった主題を介して、象徴的に表されています。

本展では、西洋社会における様々な愛の概念が絵画芸術にどのように描出されてきたのか、ルーヴル美術館の膨大なコレクションから精選された70点余りの絵画を通して浮き彫りにします。16世紀から19世紀半ばまで、約350年にわたる愛の表現の諸相をひもとく、かつてない趣向の展覧会です。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(3)
「ルーヴル美術館展 愛を描く」
開催美術館:国立新美術館
開催期間:2023年3月1日(水)~6月12日(月)

描くことに命を捧げた伝説の洋画家 佐伯祐三。大阪、東京、パリ、3つの街での佐伯の足跡を追いながら、独創的な佐伯芸術が生成する過程を検証

佐伯祐三《郵便配達夫》1928年、大阪中之島美術館
佐伯祐三《郵便配達夫》1928年、大阪中之島美術館

大阪、東京、パリ。3つの街で、画家としての短い生涯を燃焼し尽くした画家、佐伯祐三(1898-1928)。2023年に生誕125年を迎える佐伯の生涯は、多くのドラマと伝説に彩られています。彼が生み出した作品群は、今なお強い輝きを放ち、見る人の心を揺さぶらずにはおきません。

1898年に大阪で生まれた佐伯祐三は、25歳で東京美術学校を卒業し、その年のうちにパリに向かいます。作品を見せたフォーヴィスムの画家ヴラマンクから、「このアカデミック!」と怒声を浴びたことが、佐伯を覚醒させます。2年間の最初のパリ滞在中に、ユトリロやゴッホらからも影響を受け、佐伯の作品は大きな変貌を遂げていきます。1年半の一時帰国を経て、再渡欧したのは1927年のこと。このとき佐伯は29歳になっていました。パリに戻った佐伯は、何かに憑かれたかのように猛烈な勢いで制作を続けますが、結核が悪化して精神的にも追い詰められ、1年後にパリ郊外の病院で亡くなりました。

佐伯にとってパリは特別な街でした。重厚な石造りの街並み、ポスターが貼られた建物の壁、プラタナスの並木道、カフェ、教会、さらには公衆便所までが、傑作を生み出す契機となりました。また、多くの画家たちや作品と出会い、強い刺激を受けたのもパリでのことです。一方で、生誕の地・大阪、学生時代と一時帰国時代を過ごした東京も、佐伯芸術を育んだ重要な街でした。本展では3つの街での佐伯の足跡を追いながら、独創的な佐伯芸術が生成する過程を検証します。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(4)
「佐伯祐三 自画像としての風景」
開催美術館:東京ステーションギャラリー
開催期間:2023年1月21日(土)~4月2日(日)

古来より特異な文化圏を形成していたフランス・ブルターニュ地方を表した作品約160点を松方コレクションや国内美術館や個人コレクションから展示

ポール・セリュジエ 《ブルターニュのアンヌ女公への礼賛》 1922年 油彩/カンヴァス ヤマザキマザック美術館
ポール・セリュジエ 《ブルターニュのアンヌ女公への礼賛》 1922年 油彩/カンヴァス ヤマザキマザック美術館

19世紀後半から20世紀にかけ、各国の画家たちがフランス北西端のブルターニュ地方を訪れ、この地を多くの作品に描きとめました。

本展では国立西洋美術館の「松方コレクション」をはじめ、国内美術館や個人コレクションおよそ30か所からブルターニュを表した作品約160点を選りすぐり、それぞれの画家たちがこの地に何を求め、見出したのかを探ります。

さらに、同じころブルターニュを訪れた日本の画家たちにも注目する初の展覧会となります。

◆ ブルターニュ地方とは?
フランス北西部、大西洋に突き出た半島を核としたブルターニュ地方は、古来より特異な文化圏を形成していました。断崖の連なる海岸線に岩々が覆う荒野といった雄大な自然、先史時代の巨石遺構や独特な宗教的モニュメント、ケルト系言語を話す人々の素朴で信心深い生活様式 — このフランスの内なる「異郷」は、19世紀になると人々の注目を集めるようになります。美術の領域でも、新たな画題をもとめる画家たちがブルターニュを目指し、以来この地は流派や国籍を問わず多様な画家たちを受け入れ、19世紀末にはポール・ゴーガンが率いるポン=タヴェン派やナビ派といった、美術史上重要な画家グループの誕生を促しました。またこの時代、日本は明治・大正期。黒田清輝や藤田嗣治など日本から渡仏した画家たちもブルターニュを訪れ、この地を主題とした作品を残しています。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(5)
「憧憬の地 ブルターニュ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」
開催美術館:国立西洋美術館
開催期間:2023年3月18日(土)~6月11日(日)

開館70周年を記念して、重要文化財に指定された作品のみを紹介。それらはいかにして重要文化財に指定されるに至ったか、美術史の秘密にも迫る

黒田清輝 《湖畔》 重要文化財 1897(明治30)年 東京国立博物館蔵 4月11日~5月14日
黒田清輝 《湖畔》 重要文化財 1897(明治30)年 東京国立博物館蔵 4月11日~5月14日

東京国立近代美術館は1952年12月に開館し、2022年度は開館70周年にあたります。これを記念して、明治以降の絵画・彫刻・工芸のうち、重要文化財に指定された作品のみによる豪華な展覧会を開催します。

とはいえ、ただの名品展ではありません。今でこそ「傑作」の呼び声高い作品も、発表された当初は、それまでにない新しい表現を打ち立てた「問題作」でもありました。そうした作品が、どのような評価の変遷を経て、重要文化財に指定されるに至ったのかという美術史の秘密にも迫ります。

重要文化財は保護の観点から貸出や公開が限られるため、本展はそれらをまとめて見ることのできる得がたい機会となります。これら第一級の作品を通して、日本の近代美術の魅力を再発見していただくことができるでしょう。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(6)
「東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密」
開催美術館:東京国立近代美術館
開催期間:2023年3月17日(金)~5月14日(日)

人間の心を動かす優しさ、美しさ、知的な興奮、そして共感をもたらす建築とは何か。ヘザウィック・スタジオの主要プロジェクト28件から探る

ヘザウィック・スタジオ《リトル・アイランド》 2021年 ニューヨーク 撮影:ティモシー・シェンク
ヘザウィック・スタジオ《リトル・アイランド》 2021年 ニューヨーク 撮影:ティモシー・シェンク

1994年にロンドンで設立されたヘザウィック・スタジオは、ニューヨーク、シンガポール、上海、香港など世界各地で革新的なプロジェクトを手掛ける、現在、世界が最も注目するデザイン集団のひとつです。創設者トーマス・へザウィック(1970年、英国生まれ)は、子どもの頃、職人が作った小さなものに宿る魂に心を躍らせていたといいます。建築という大きな建物や空間にも、その魂を込めることはできるのか。この問いがヘザウィック・スタジオのデザインの原点となりました。

全てのデザインは、自然界のエネルギーや建築物の記憶を取り込みつつ、都市計画のような大規模プロジェクトもヒューマン・スケールが基準となるという信念に基づいています。その根底には、プロダクトや建築物というハードのデザインよりも、人々が集い、対話し、楽しむという空間づくりへの思いがあるのかもしれません。

モノやその土地の歴史を学び、多様な素材を研究し、伝統的なものづくりの技術に敬意を払いながら、最新のエンジニアリングを駆使して生み出される空間は、誰も思いつかなかった斬新なアイデアで溢れています。新型コロナウイルスのパンデミックを経て、わたしたちが都市や自然環境との関係性を見直すなかで、ヘザウィック・スタジオのデザインは、来る時代に適う、これまで以上に豊かな示唆を与えてくれることでしょう。

本展は、ヘザウィック・スタジオの主要プロジェクト28件を天空の大空間で紹介する日本で最初の展覧会です。試行錯誤を重ね、新しいアイデアを実現する彼らの仕事を「ひとつになる」、「みんなとつながる」、「彫刻的空間を体感する」、「都市空間で自然を感じる」、「記憶を未来へつなげる」、「遊ぶ、使う」の6つの視点で構成し、人間の心を動かす優しさ、美しさ、知的な興奮、そして共感をもたらす建築とは何かを探ります。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(7)
「へザウィック・スタジオ展:共感する建築」
開催美術館:六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー
開催期間:2023年3月17日(金)~6月4日(日)

「画聖」とも崇められた絵仏師・明兆による畢生の大作「五百羅漢図」の現存全47幅や特大サイズの仏像など、全てが圧巻の東福寺初の大規模展

重要文化財 達磨・蝦蟇鉄拐図 吉山明兆筆 室町時代・15世紀 京都・東福寺蔵
※展示期間:3月7日(火)〜4月9日(日)
重要文化財 達磨・蝦蟇鉄拐図 吉山明兆筆 室町時代・15世紀 京都・東福寺蔵
※展示期間:3月7日(火)〜4月9日(日)

新緑や紅葉の名所として知られる大本山東福寺とその塔頭には、中国伝来の文物をはじめ、建造物や彫刻・絵画・書跡など禅宗文化を物語る多くの特色ある貴重な文化財が伝えられ、国宝や重要文化財に指定されるものは105件に及びます。

東福寺の寺宝をまとめて紹介する初の機会となる本展では、「画聖」とも崇められた絵仏師・明兆(みんちょう)による畢生の大作「五百羅漢図」の現存する全47幅を修理後初公開するとともに、巨大伽藍にふさわしい特大サイズの仏像や書画類の優品も一堂に展観します(※会期中展示替えがあります)。

草創以来の東福寺の歴史をたどりつつ、大陸との交流を通して花開いた禅宗文化の全容を幅広く紹介し、東福寺の日本文化における意義とその魅力を余すところなくご覧いただきます。

◆ 東福寺について
東福寺は、鎌倉時代前期に摂政・関白を務めた九条道家が、奈良の東大寺と興福寺とを合わせたような大寺院の創建を発願し、開山として円爾(えんに / 聖一国師)を招いて建立した禅宗寺院です。後世「伽藍面(がらんづら)」と称されるほど我が国随一の巨大伽藍を誇り、多くの弟子を育成しました。南北朝時代には京都五山の第四に列し、本山東福寺とその塔頭には中国伝来の文物をはじめ、建造物や彫刻・絵画・書跡など禅宗文化を物語る多くの特色ある文化財が伝えられています。国指定を受けている文化財の数は、本山東福寺・塔頭合わせて国宝7件、重要文化財98件、合計105件におよびます。そのうち東福寺所属の絵仏師・吉山明兆(きっさんみんちょう)は大部の禅宗画を数多く描き、代表作に近年大修理の完成した重要文化財「五百羅漢図」があります。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(8)
特別展「東福寺」
開催美術館:東京国立博物館
開催期間:2023年3月7日(火)~5月7日(日)

美術とファッションの境界を交差するように生きたマリー・ローランサンとココ・シャネルの活躍を軸に、国内外のコレクションから約90点で紹介

マリー・ローランサン 《ニコル・グルーと二人の娘、ブノワットとマリオン》 1922年 油彩/キャンヴァス マリー・ローランサン美術館 © Musée Marie Laurencin
マリー・ローランサン 《ニコル・グルーと二人の娘、ブノワットとマリオン》 1922年 油彩/キャンヴァス マリー・ローランサン美術館 © Musée Marie Laurencin

ふたつの世界大戦に挟まれた1920年代のパリ。それは様々な才能がジャンルを超えて交錯し、類まれな果実を生み出した、奇跡のような空間でした。とりわけ女性たちの活躍には、目を見張るものがありましたが、ともに1883年に生まれたマリー・ローランサンとココ・シャネルの二人は、大戦後の自由な時代を生きる女性たちの代表ともいえる存在でした。

女性的な美をひたすら追求したローランサンと、男性服の素材やスポーツウェアを女性服に取り入れたシャネル。本展では美術とファッションの境界を交差するように生きた二人の活躍を軸に、ポール・ポワレ、ジャン・コクトー、マン・レイ、そして美しいバイアスカットを駆使したマドレーヌ・ヴィオネなど、時代を彩った人々との関係にも触れながら、モダンとクラシックが絶妙に融合する両大戦間パリの芸術界を俯瞰します。

時代とともにありながら、時代を超えた存在となったローランサンとシャネル。二人の創作の今日的な意味とその真価が、生誕140年を記念するこの展覧会で明らかになるでしょう。

本展では、オランジュリー美術館やマリー・ローランサン美術館※など国内外のコレクションから、約90点のラインナップで紹介します。

※マリー・ローランサン美術館:マリー・ローランサンの世界で唯一の専門美術館。1983年~2011年まで長野県蓼科高原で開館。2017年~2019年まで東京・ホテルニューオータニで開館。現在コレクションの公開はしていない。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版( 9 )
「マリー・ローランサンとモード」
開催美術館:Bunkamura ザ・ミュージアム
開催期間:2023年2月14日(火)~4月9日(日)

中国陶磁器など東洋美術の蒐集から審美眼を磨いた松岡清次郎が晩年に始めた西洋画コレクションから、フランス印象派・新印象派の絵画を一挙に紹介

ピエール=オーギュスト・ルノワール《リュシアン・ドーデの肖像》1879年 後期展示
ピエール=オーギュスト・ルノワール《リュシアン・ドーデの肖像》1879年 後期展示

松岡清次郎の西洋画コレクションは晩年の75歳からはじまりました。中国陶磁器を中心とする東洋美術を存分に味わい、自らの美への直観力を磨いたコレクターの眼は、独自の世界観を持つコレクションを形成しました。

今回は松岡美術館が所蔵する西洋画コレクションの中から、モネ、ルノワールをはじめとする、フランス印象派・新印象派の絵画を一堂に会します。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(10)
「モネ、ルノワール 印象派の光」
開催美術館:松岡美術館
開催期間:2023年6月20日(火)~10月9日(月・祝)

人間の「魂」を描きたいと考えた片岡球子が取り組み続けた、迫力ある作品「面構(つらがまえ)」シリーズ42点や初公開作品など展示の貴重な機会

《面構 葛飾北斎》 1971(昭和46)年 神奈川県立近代美術館蔵
《面構 葛飾北斎》 1971(昭和46)年 神奈川県立近代美術館蔵

片岡球子(1905(明治38)年-2008(平成20)年)は、北海道札幌市生まれ。1926(大正9)年、女子美術専門学校日本画科高等科を卒業後、神奈川県横浜市の大岡尋常高等小学校(現横浜市立大岡小学校)に勤めながら創作を続けました。日本美術院の再興第17回院展に25歳で初入選、のちに同人へと推挙され日本画家としての地位を確立。1955(昭和30)年に小学校を退職し、母校女子美術大学日本画科にて教鞭をとり、1966(昭和41)年愛知県立芸術大学開校を機に同校の日本画科主任教授となりました。1989(平成元)年、文化勲章を受章。

再興第51回院展より開始した「面構」シリーズは、1966年から2004(平成16)年までの38年間で44点を出品、片岡球子のライフワークとなりました。『面構は顔だけを描いているだけではなく、その人間が現代に生きていたらどんな風に役立つかなどと、思いながら描いています。』片岡球子の言葉にあるように、「面構」は単に歴史上の人物の肖像ではありません。人間の「魂」を描きたいと考えた片岡球子が取り組み続けた作品です。綿密に取材・推敲を重ね確信をもって血肉のある人間に仕立てあげています。

本展は、迫力ある「面構」シリーズ42点と初公開の小下図、「面構」の出発点となる作品などを展示する大変貴重な機会となります。片岡球子が生涯をかけて挑んだ「面構」―「たちむかう絵画」から、日本画の持つ力と新たな可能性をぜひ感じてください。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(11)
「面構(つらがまえ) 片岡球子展 たちむかう絵画」
開催美術館:そごう美術館
開催期間:2023年1月1日(日・祝)~1月29日(日)

型にはまることを嫌い、振幅の激しい画業を通して描くことの意味を問い続けた、速水御舟の画家としての道筋を本画約100点と素描により振り返る

速水御舟《鍋島の皿に柘榴》1921(大正10)年 絹本彩色・額装
速水御舟《鍋島の皿に柘榴》1921(大正10)年 絹本彩色・額装

速水御舟(1894-1935)は、明治の末期から昭和初期にかけて活躍した代表的な日本画家の一人です。明治維新以後、日本が近代化を進める中で、美術の世界、とりわけ日本画は大きな変化を強いられました。その渦中にあって、わずか30年ほどの活動を通じ、御舟はその後の近代日本画の展開に強い影響を与え、その方向性を決定づける仕事を多く遺しました。

古画の模写、写生に基づく叙情的な作品、大正期の精緻を極めた写実描写、そして古典的な絵画への回帰、単純化と平面性を伴う作品へと変化する画風には、一人の画家とは思えないほどの多彩な表現が見られます。ただ、そこには対象の真実に肉薄しようとした、御舟の一貫した姿を見ることができます。それは近代という時代に西洋と対峙する中で、日本画が直面せざるをえなかった様々な問題に真摯に向き合った結果ともいえます。

この展覧会では本画約100点と素描により、型にはまることを嫌い、振幅の激しい画業を通して描くことの意味を問い続けた、御舟の画家としての道筋をあらためて振り返ります。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(12)
「速水御舟展」
開催美術館:茨城県近代美術館
開催期間:2023年2月21日(火)~3月26日(日)

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